歯ぎしりが続くと危険?
歯ぎしり(ブラキシズム)によって歯や周囲の骨に加わる力は実に自身の体重ほどだと言われます。ストレスなどが関係して、寝ている時に体重の2倍以上の噛む力が加わっていたという実験結果もあるほどです。
歯ぎしりや噛みしめ習慣がある場合、その大きな力が持続的にかかるせいで、硬いものを食べる時のように一瞬だけ強い力がかかる場合よりもずっと大きな影響が出てきます。
※寝ている間の歯ぎしり・食いしばりは自覚できないものです。起きた時に歯が痛かったり、顎の疲れ(だるさ)を感じたら歯ぎしりをしているサインかもしれません。
歯ぎしりの悪影響
歯がすり減る、欠ける、亀裂が入る、割れる、銀歯が取れるなどの様々なトラブルが出てきます。
また、知覚過敏(歯がしみる)を起こすこともあります。
- 歯周病の悪化
- 顎関節症(顎の障害)、顎のずれ、顔面の変形
- 頭痛・肩こり
歯ぎしりの種類
グラインディング タイプ(歯ぎしり型)
歯の全体を横にギリギリとこすり合わせるタイプです。その運動範囲は広く、全体がすり減っていきます。夜間寝ている間にしてしまうことがほとんどです。
この習慣が長いほど、また強い力で歯ぎしりするほど歯の長さが短くなっていくのが特徴です。
クレンチング タイプ(噛みしめ型)
無意識のうちに噛みしめてしまうタイプで、日中・夜間にかかわらず起こります。噛みしめるだけで音はなりませんが、わずかに横に動かす場合があり、その時にギリギリと音がすることがあります。
噛みしめをする多くの人には骨瘤気(骨の出っ張り)があり、歯茎や上あご中央部が盛り上がっています。
また、頬の粘膜や舌に圧痕(歯型状の模様)が付くのが特徴で、奥歯がとても短くなっていきます。
ナッシングタイプ(きしませ型)
ナッシングタイプは全体ではなく、ある一定の場所だけギリギリとこすり合わせるタイプです。
犬歯やその1~2本後ろの先端だけがすり減っていることが多くあります。こすり合わせの場合、日中にはみられず夜間がほとんどです。きしませるため大きな音が鳴ります。
コンプレックスタイプ(混合型)
ブラキシズム(歯ぎしり)のある人には、3つのタイプのうち、どれか1つだけの場合(単独型)と、2つ以上のパターンを同時に、または違う時間にしてしまう場合(混合型)があります。
混合型の場合は、お口に現れる変化が様々です。
研究で得られた結果から、歯ぎしり癖のある方には混合型が多いことがわかりました。
タッピングタイプ
上下の歯をぶつけ合います。「カチカチ」と音がするのが特徴です。
歯ぎしりの原因
原因は多因子性であり、ストレス・性格・遺伝・セロトニンの再取り込み阻害薬の服薬・飲酒・喫煙・特定の病気(脳性麻痺、睡眠呼吸障害など)が関係している事がわかっていますが、はっきり究明はされていません。
最近の研究では、寝ている間の大脳上位中枢の興奮に由来し、ストレスや睡眠との関係が注目されています。
睡眠は浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返します。歯ぎしり(ブラキシズム)は浅い眠り(レム睡眠)の時に起きることがわかっています。
特に、ストレスで神経のバランスが崩れたり、緊張していたりすると歯ぎしりが起きやすい様です。
また最近は、睡眠時無呼吸症候群や、逆流性食道炎との関係にも注目されています。
歯ぎしりの検査
覚醒時の歯ぎしり・噛みしめ
無意識に行ったり、意識的に必要以上に強い力をかけている場合があります。
起きている間に歯を噛みしめていたりしないか、ご自身の生活習慣を振り返ってみてください。
睡眠時の歯ぎしり・噛みしめ
GS検査(睡眠ポリグラフィー:睡眠時の脳波、心電図、眼電図、呼吸、酸素飽和度、筋電図を計測)を用い、歯ぎしりの診断をすることは可能ですが、一般的な歯医者で行うことは困難です。
そこで以下に示す「臨床的診断基準」に照らして診断することになります。
- 患者様が寝ている間の歯ぎしり音や噛みしめ習慣を自覚している。
- 以下の兆候の内1つ以上が当てはまる
- 歯の異常なすり減りが認められる。
- 起きた時に咀嚼筋(顎、こめかみ付近の筋肉)の不快感、疲労、痛みや顎の引っ掛かりがある。
- 強く意識して噛みしめをした際に咬筋(顎の筋肉)の肥大が認められる。
- 別の睡眠関連疾患、医学的あるいは神経学的障害、薬物使用または物質使用による障害などではうまく説明できない咀嚼筋の活動がある。
歯ぎしりを治す方法
歯ぎしり(ブラキシズム)に関連する因子は、患者様個々で異なるため、歯ぎしりを確実に抑制できる単一の治療方法はありません。患者様の状況に応じて以下の対策を行います。
※歯ぎしり・噛みしめ習慣は、まずその習慣自体を自覚することが大切です。その習慣によってお口の中や周囲に悪影響が及んでいることを、しっかり認識していきましょう。
覚醒時の歯ぎしり・噛みしめ
上下の歯を強く噛みしめたり、舌を吸いつけていることはありませんか?
そんな時は、肩を上下させ首から上の力を思い切り抜き、頬の力も抜き歯をかみ合わせないようにしましょう。
頬づえ、肘をつく癖があると、噛みしめやすくなるので注意しましょう。
また、極端に硬いものが好きな方も注意が必要です。
寝ている間の歯ぎしり・噛みしめ
寝る前の注意および暗示療法
歯ぎしり・噛みしめは、口の周りに緊張が強く表れているものです。自分自身で「噛みしめないでリラックスして寝よう」と復唱して寝ることが有効とされます。
寝る前にいったん体に力を入れ緊張状態にしてから、ふっと力を抜くことも効果的です。
また、高い枕を使用したり、うつ伏せ寝の状態は噛みしめやすくなるので注意しましょう。
ナイトガード(マウスピース)
暗示療法の補助装置として、ナイトガード(マウスピース)があります。
夜間の寝ている間に装着し、無意識のうちにしてしまう歯ぎしりや食いしばりによる歯や顎、筋肉の負担を軽減する効果があります。
しかし、ナイトガード(マウスピース)はあくまで補助装置です。これさえあれば大丈夫、という意識で使用していると、余計に歯ぎしり・噛みしめがひどくなる場合があるためご注意ください。
当院ではマウスピース作製が可能です
ナイトガード(マウスピース)は保険適用になっております。保険治療用語では口腔内装置と呼ばれます。
作製には型取りが必要なため、治療に2回を要します。
なかむら歯科クリニックでは以下の3種類から作製が可能です。
- 口腔内装置1:アクリルレジン樹脂で作製した硬いタイプ、上下のかみ合わせに合わせて作製
- 口腔内装置2:熱可塑性シート等より作製した硬いタイプ、上下のかみ合わせにあわせて作製
- 口腔内装置3:熱可塑性シート等より作製した柔らかいタイプ
かみ合わせの状態や、噛む力の強さなどを考えて作製します。
一般に、硬いタイプは違和感が出やすいけれども歯ぎしり防止効果が高く、柔らかいタイプだと違和感は出にくいが歯ぎしり防止効果は弱いといわれています。

ナイトガード(マウスピース)の費用
※金額は多少の変動がございます。(保険3割負担で算出)
型取り、かみ合わせの記録をもとにアクリリック樹脂で作製する硬質のマウスピース | 5,600円 |
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型取りを行い、熱可塑性シートを加工して作製した硬質のマウスピース | 3,000円 |
型取りを行い、熱可塑性シートを加工して作製した軟性のマウスピース | 2,600円 |